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無罪判決相次ぐ「SBS(乳幼児揺さぶられ症候群)」

 乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome, SBS)をめぐって、傷害罪や傷害致死罪で起訴された母親らに対する無罪判決が相次いでいる。

 大阪高裁での2件の逆転無罪判決(2019.10.25,2020.2.6)のほか、最近では9月25日、岐阜地裁でも無罪判決が言い渡された。有罪率が99%を超える日本の刑事司法において、極めて異例の事態である。

 

 SBSとは、乳幼児の上半身を抱えたまま前後に激しく揺さぶることで頭部に回転性加速度減速度運動が起こり、脳の中などに損傷が生じて発症するとされる症候群のことをいう。①硬膜下血腫②網膜出血③脳浮腫ーの3つの症状で診断されるとされ、「3つの症状がそろっていて、3m以上の高位落下事故や交通事故の証拠がなければ、自白がなくともSBSと診断できる」という理論である。

 

 しかし、この理論には国内外においてさまざまな批判にさらされている。すなわち、低いところからの落下でも硬膜下血腫になるという研究、低酸素脳症でも同様の症状が生じるという研究など、揺さぶり行為がなくとも同様の症状が生じることはあるというものである。

 岐阜地裁においても「ソファからの落下で傷害が生じた可能性は否定できない」とされた。

 

 厚労省においても「子ども虐待対応の手引き」改訂においてSBSの見直しが進んでいるとのこと。今後、乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)の議論を注意深く見守る必要がある。

 

 参考ブログ SBS(揺さぶられっ子症候群)を考える

 参考論文 笹倉香奈「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)とその歴史」(『医療判例解説』2020年6月号)