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高齢者のネット通販トラブル、15倍に

 日経新聞10月17日朝刊一面に「『買い物弱者』ネットでも 相談、9年で15倍 高齢者の誤注文など 操作に不慣れ・認知機能衰え」という見出しの記事が掲載されていたので紹介する。

 

 日経新聞が国民生活センターの相談データを調べたところ、60歳以上は2019年度の約2万5800件と、2010年度の15倍になったとのことである(59歳以下の伸びは6倍弱)。

 特に、健康食品をめぐるトラブル相談が多く、ネットで購入したケースが7400件と、2010年度から102倍にも膨らんだとのこと。

 この記事で面白かったのは、実際に過剰注文の実験をして、各社の対応を比較しているところ。

 Amazon、楽天市場、Yahoo!の通販サイトで最も安い価格で最初に表示された同一の健康食品を1日2回、8日連続で注文。

 すると、Amazonではすぐに重複購入を伝えるメッセージが画面上部に表示される。楽天やYahoo!では警告なし。ただ、楽天は条件確認のポップアップ表示だけが購入時に出た。Yahoo!ではいずれの表示も確認できなかったとのことである。

 

 日経はまとめとして「ビッグデータ生かし、きめ細かな異常検知と通知を」とする。技術的には賛同するところではあるが、いざトラブルが生じた場合のキャンセル手続を容易にしていく必要がある。記事でも指摘しているが、キャンセルがネット手続のみでは、高齢者は諦めてしまいがち。また、コールセンターを設けている場合でもつながりにくい場合も少なくない。

 

 また、そもそも論だが、ネット社会になり、これまでネット社会と無縁だった高齢者にネット通販を促し、被害拡大を引き起こしている点はないのだろうか。携帯電話もガラケーからスマホへの移行が進んでいる。電話・メールなどの簡単な機能のみで不自由しなかった高齢者に対し、「便利だから」などと安易にネット通販を促していないだろうか。

 私が担当するサクラサイト被害事件においても、高齢者がだまされて多額の被害を被っている。

 いつでもどこでもネットができる社会に、操作に不慣れで認知機能が衰えた高齢者が足を踏み入れるのはリスクが大きい。ネット社会と無縁の生活を送る権利も保障しなければならない。