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「歪んだ正義 『普通の人』がなぜ過激化するのか」大治朋子著

 毎日新聞編集委員である著者が、イスラエルの大学院での研究成果を自身の取材経験も織り交ぜながらまとめた、貴重な論考である。2020年8月発行、毎日新聞出版。

 ローンウルフ(一匹オオカミ)によるテロリズムが拡大するなか、「普通の人」がさまざまな経緯を経て過激化する心理メカニズムを解明しようとしている。YouTubeやSNSの影響も検討している。

 人が両腕を伸ばしてシーソーの上に立っているイラスト(「ホメオスタシス(平衡維持力)」のイメージ)から着想を得て、「誰もが持つ、負荷と資源のバランスシート」を整理し、そのバランス、やじろべえを保つことができるか否かが過激化プロセスへ入り込む人とそうでない人を分ける、という考え方は、大変参考になった(第5章「誰にでもある心身のバランスシート」)。

 そのうえで「過激化をいかに防ぐか」(第7章)を具体的に考察している。備忘録を兼ねて、第7章の細目を挙げておく。

 ・正負のエネルギーが循環する

 ・子供の世界観を育てる

 ・ストレス対処メカニズム

 ・認知のクセを自覚する

 ・ナラティブ(物語)にはナラティブで対抗

 ・ヒューマニズム(人間性)の力を使う

 ・犯行予告を「コミュニケーション」と見なす

 ・「小さな攻撃・いじめ」を認識する

 ・傍観者効果を回避する

 ・コミュニティの重要性を認識する

 ・インテリジェンスの思い込みvs過激派の思い込み

 

 多発するローンウルフによる事件を少しでも減らすためにも、一読をお勧めする。